【乗船記】太平洋フェリー「いしかり」名古屋~苫小牧1330kmの船旅⑧ 仙台出港
まもなく1940になります。苫小牧に向けて、仙台を出港します。
このフェリーには、船首と船尾に横向きのトンネルがあって、その中に横向きのプロペラが付いています。この機構はサイドスラスターと呼ばれていて、これによって自力での横移動やその場での回転など、通常のスクリューと舵だけでは不可能な動きを可能にしています。しかし、仙台港という港は、200m級の船にとっては狭く、自力での方向転換は流石に危険です。では、陸側に頭を向けて停まっているこの船は、どうやって出港するのでしょう。
出港前に、フェリーにタグボートが繋がれました。タグボートというのは、大型船の離岸・着岸を補助するための船で、小柄な船体に大馬力機関を備えていて、自分よりかなり大きな船を軽々と押したり曳いたりできます。青函連絡船では「補助汽船」と呼ばれていたそうです。
(これは別の日に苫小牧港で撮影したタグボートと、護衛艦の離岸作業の様子)
最近のフェリーや客船は大抵サイドスラスターを備えており、タグボートで押されたり曳かれたりしているのは基本的に我々が乗れない貨物船や軍艦などです。しかし、仙台港のような狭い港ではフェリーでも離岸時にタグボートに曳かれる体験が可能なのです。あとはまぁ沖で機関が故障して漂流した時なんかもタグボートに曳航されるんでしょうけど、そんな体験はしたくないですね。
1940、岸壁をゆっくり離れた船内に軽快な音楽が流れ、その音楽に合わせるようにタグボートがぐいぐいとフェリーを引っ張りはじめます。全長約200mの「いしかり」がゆっくりと方向を変えます。
150度くらい回ったところでロープが切り離されます。フェリーはそのまま惰性で180度まで回り、船首が港の出口のほうを向きました。
タグボートさんありがとうございました~。
約3時間滞在した仙台港に別れを告げ、フェリーは苫小牧へ向けて暗闇の太平洋に出ていきます。
流石に寒くて暗い中でこの出港作業を見物している乗客は私だけでした。この航路に乗る機会があったら皆さん是非仙台出港作業ちょっと見てみてください。面白いので。でもこれ見物するなら昼間出港の名古屋行きのほうがいいかもね。
【目次】
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