あにょりもっも

気まぐれ旅行記みたいなものを目指したなにか

日高本線 ~ 運休が続く被災ローカル線の現在の姿

苫小牧~様似を結ぶ長大ローカル線「日高本線

札幌日帰り圏内で、風光明媚な路線ということで、ファンの人気も高い路線でしたが、2015年1月の高波による路盤流出により鵡川~様似の運休を余儀なくされ、それが復旧しないまま同年9月に台風により更に被害が増大。JR北海道は復旧には沿線自治体の資金協力が不可欠だとしていますが、沿線自治体は協力姿勢を見せず、議論が進まないうちに2016年には台風が連続襲来し被害は更に増え、もはや復旧は絶望的となってしまいました。

 

2017年7月22日。そんな日高本線廃線跡めぐり現状調査に行ってきました。

交通手段にはレンタカーを用いました。いや、だって、ほら、代行バスじゃそんな回ってられないんだもん…(とか言ってるけどまぁドライブしたかっただけですね)

 

 私がまず向かったのは鵡川駅。現在、日高本線の列車はこの鵡川で全て折り返しています。駅前からは静内行きの代行バスが出ています。

鵡川は苫小牧から30.5kmの位置にあり、全長146.5kmの日高本線のほんの始まりの部分という感じなので、これに乗って折り返すだけでは物足りなさが半端じゃないです。しかも鵡川までは胆振なので、日高本線って言ってるくせに日高地方には一歩も入ってないというわけで…

日高本線用に塗装だけではなくエンジンもパワーアップしているキハ40を、これだけにしか使わないというのも勿体ない話なので、この車両は室蘭本線や石勝線にもこの塗装のまま入っている様子がよく目撃されています。

鵡川駅の様似方を眺めてみると、奥のほうで、錆びたレールの上に枕木が置かれています。この信号機も運休中ずっと赤しか灯していないのでしょう…

跨線橋の上から駅を眺めてみました。広い構内・長いホームに1両だけポツンという風景は、北海道みたいな地域ではごくありふれた光景です。

列車の発車後、発着線の色を観察してみると、日常的に列車が走る部分と、列車がもう走っていない部分とで色が違うことがわかります。左の線路は列車停止位置より奥が茶色く錆びており、右は全く使われていないので全体が錆びています。構内踏切はもはや鳴る意味がないのですが、今でも列車が接近すると鳴っています。

 

鵡川駅を後にした私は、富川へと車を進めました。

これは富川駅付近の踏切。こうして見ると普通に稼働してそうな見た目ですが、

よく見ると遮断器が取り外されていました。

列車は全く来ませんが、ここを通行する車はみな一時停止をしていました。

2年半くらい列車が走っていないということで、もっと荒れ果てた線路を想像していたのですが、線路は列車が普通に走ってきてもおかしくないくらい綺麗に手入れされていました。JR北海道はよく「災害にかこつけて赤字路線を切り捨てるつもりだ」なんて言われていますが、この線路を見ると、JRがこの路線を切り捨てたいと思っているようには見えませんでした。

 

続いて、けいおん!」の聖地じゃないほうの豊郷駅。ここは国道235号線沿いなので行きやすいです。代行バスのバス停も駅の目の前の国道にあります。

待合室からホームまでは少し草をかき分ける必要があります。現在ホームに入るのは私のような物好きな鉄道マニアだけなので、そりゃあこんな感じにもなりますわな。

列車が絶対来ないのをいいことに線路に侵入してみた(※列車が走っている路線では絶対に真似しないでください)

線路に生えた雑草は思ったよりとても少ないですが、レールの間で背の高い草がすくすくと育っているのが、この線路が生きていないことを示しています。

 

雨がだんだん強くなってきて、帰路が絶たれるんじゃないかと不安になりながらも、さらに車を走らせ、今回の一番の目的地に着きました。

この踏切、設置されたばかりで運用開始前の道路信号にかけられるような黄色いカバーがかかっています。

厚賀駅から少し苫小牧側に設置されているこの踏切の名前は「コマチップ踏切」

この場所には以前は遮断器のない歩行者用の踏切があったようで、この踏切の「改良」という形にすることで踏切のある道路を新設できたようです。

※踏切の「新設」は法律で認められていない。安全を考えてのことなのだろうが、あまりに雑な法律で困る。

しかし道路の建設中に日高本線は運休に入り、道路は完成したものの踏切はカバーをかけられたまま放置されています。

黒いカバーは風雪に晒され続けたせいか破れています。

JR北海道の新型軌道検測車マヤ35と同じような鮮やかな色の踏切板の上には、茶色く錆びたレール。これだけ見ると開業前の路線のようにも見えますね…

被災区間のど真ん中に位置する厚賀。この真新しい立派な踏切は、おそらく一度も稼働することは無いでしょう。

 

さて、静内駅までやってきました。静内駅は、みどりの窓口や自動券売機、売店・そば屋もあって、今でも駅として生きている感じがします。列車は来ないけど。

 現在の鵡川~様似の代替バスは、静内駅で系統が分かれており、静内を通り越して利用するには必ずここで乗り換えが発生します。

代行バスのバス停は、形状からして札幌市バスのお古かなにかでしょうかねぇ…?

 

なお、静内駅前を発着するバスは、列車代行バスよりも、札幌へ直通する高速路線バスのほうが賑わっていました。こっちのほうが便利だし安いし、まぁそうなりますわな。

 

 雨が止まず、時折激しくなったりしていて、土砂崩れかなにかで国道235号が通行止めにでもなったら日高本線の心配をするどころか私が家に帰れなくなってしまうので、静内より先に行くのはまた別の機会にしよう…ということにして来た道を戻ります。

節婦駅に寄りました。住宅地の中にあり、無人駅ながら駅舎は綺麗です。

ここも、線路が錆びていることを除くと、廃線しているようには見えません。いや、廃線はしてないんですけどね。

節婦駅の近くの海岸で、遠くまで見渡そうと思って全然見えねぇなぁなんてやっていると、国道から路地へ入ってくる怪しい観光バスが。

実はこれも列車代行バスです。ジェイアール北海道バスの他に、酒井交通・むかわ観光・はな交通・樽前観光が代行バスの運行を分担しています。

 

大狩部のあたりは華麗に崖の上の国道を突き進み(ちょっとくらい寄ったほうがよかっただろうか)、清畠駅の近くで運転疲れたしちょっと休憩しようかにゃーって道路脇の駐車スペースに入ったんです。そうしたら、そのすぐ脇、海側に、ぐにゃぐにゃに曲がった線路が見えました。

高波を受けて陸側に曲げられてしまったレールが、そのままの状態で残されていました。

本来はもっと海側の平らな部分に敷いてあったようです。

ここだけ見ても相当な惨状ですが、この周辺では、路盤が崩落したり橋が落ちていたりという箇所がいくつもありました。被災していない箇所が現役時代とほぼ変わらない様子を保っているだけに、このギャップは衝撃的でした。

 

日高本線を復旧させるには、巨額な費用が必要になります。しかし、巨額な費用を投じても、こんな海辺ではいつまた被災するかわからないという問題があり、さらに、汽車はもはや地域住民にとってそれほど重要な交通機関ではなくなっているという問題もあります。

廃線は寂しいことです。しかし、地域の足を守るというのは、いつまでも鉄道に固執することではなく、住民が利用しやすい交通体系を再構築していくことなのではないか、そして日高地方は今そのチャンスが与えられているのではないか。私にはそんな気がします。

 

これは日高門別IC付近から見た日高自動車道の延伸工事の風景です。日高本線が被災したまま放置されている一方で、道路はどんどん建設が進んでいるのです。

鉄道を愛する人からしたらとんでもない話に聞こえるでしょうが、現実問題として、この地域の人達は線路よりも道路が生活に不可欠なものとなっているのです。

 

さて、難しい話で疲れたと思うので、お馬さんでも見て癒やされてください。

日高はすごいです。馬だらけです。競走馬の一大産地ですからねここ。

 

そんなわけで今回の日高本線調査はここまで。次回があるかどうかはわかりませんが、次回があったら静内より先まで足を伸ばしたいと思っております。

 

~おまけ~

今回の調査に使用したレンタカー

夏の北海道をクリーンディーゼルで走ろう!!!みたいな5000円くらいのキャンペーンで、まさかアクセラに乗れるとは。タイムズカーレンタルはいいぞ(ダイレクトマーケティング)

マツダディーゼルはすんごい。静かだし坂はぐんぐん登るし燃費は良いし。これで排ガスも綺麗だとかマツダほんとすっげぇわ。

みんなも北海道の道路をマツダのクルマでかっ飛ばそう!(速度違反はしないでね!)